不整脈
不整脈とは
不整脈には病気に由来するものと、そうでない、生理的なもの(運動や精神的興奮、発熱)があります。
脈が不規則な状態を指し、心拍のリズムに乱れが生じた状態を不整脈といいます。脈が1分間に50以下の場合を徐脈、100以上の場合を頻脈といいます。安静時の一般的な成人の心拍(収縮と拡張を繰り返す運動)は毎分60~100回です。
不整脈はその原因や起こり方などによって、何十種類にも細かく分類されますが、大きく分けると「1.速い」「2.遅い」「3.飛ぶ・抜ける」3つのタイプになります。
1.頻脈性不整脈:心拍数が速く、毎分150回以上になる不整脈です。
2.徐脈性不整脈:心拍数が遅く、毎分50回以下になる不整脈です。
3.期外収縮不整脈:心拍数が飛んだり、抜けたり乱れたりする不整脈です。
*致死性不整脈:心室頻拍や心室細動のことで、もっとも怖い不整脈です。
不整脈の症状
頻脈性不整脈
胸の不快感や激しい動悸などが生じます。吐き気や冷や汗が出て、重症の場合、意識を失うこともあります。
徐脈性不整脈
動作時の息切れやめまい、疲労感が起こります。重症の場合、失神や死に至ることもあります。
期外収縮
息苦しさや胸の詰まった感じ、脈が飛ぶ不快感、胸痛が起こります。しかし自覚症状がない方も多いようです。
致死的不整脈
ドキドキする、胸が苦しいなどの症状の頻度が高くなり、意識消失・心肺停止・突然死が最初の症状となります。
不整脈が長期間持続すると心臓のはたらきが悪くなり、息切れやむくみといったいわゆる心不全の症状が発生します。
不整脈の原因
不整脈には、原因があるものと、原因がはっきりしないものがあります。
原因があるもの
心臓の病気
冠動脈疾患、心臓弁障害、心不全、先天性心疾患など
その他の病気
高血圧、甲状腺の病気、慢性閉塞性肺疾患などの肺の病気など
薬の副作用
一部の降圧薬・抗うつ薬、抗不整脈薬など
原因がはっきりしないもの
加齢、体質、ストレス、睡眠不足、疲労、喫煙、アルコール多飲などの生活習慣
不整脈の診断基準
安静時12誘導心電図
体の表面から心臓の電気の流れを調べ、不整脈や心筋障害の有無などを調べます。
ホルター心電図
24時間連続記録する心電図検査です。どのような不整脈がいつ、なにをしているときに起こるのかを調べます。
長時間心電図レコーダー
24時間のホルター心電図で不整脈が見つからない場合に最大2週間分の心電図を記録することができます。防水のため、入浴中も心電図を記録することもできます。
植込み型ループレコーダー
最大3年間の心電図を記録することができます。いつ起こるかわからない失神や、原因が特定できない脳卒中の原因の一つといわれる心房細動を見つけることができます。
運動負荷心電図
日常生活の行動中に現れる動悸や息切れ、胸痛などの症状を再現し、その時の血圧、心電図変化を調べる検査です。
ヘッドアップティルト試験
自律神経の調節異常が起こりやすいかどうかを確認する検査です。
心臓電気生理学的検査
心臓の中に電極カテーテルを留置し、刺激伝導系といわれる心臓の電気の流れを調べる検査です。
不整脈の治療法
薬物療法
不整脈を停止させる、不整脈の発生を予防する、不整脈の頻度を減らす、不整脈の症状を軽減する薬を使用します。
抗不整脈薬
脈を遅くするものや、不整脈を正しい調律に戻すものなど様々な種類があります。アプリンジン、アミオダロン、ジソピラミドなど
β遮断薬
アドレナリンを遮断することにより心拍数を低下させます。ビソプロロール、アテノロールなど
カルシウム拮抗薬
主に降圧剤や狭心症に対する治療薬、一部の薬剤は脈拍数を低下させるとして用いられます。ベラパミル、ジルチアゼムなど
抗凝固薬
血栓の発生を予防します。ワルファリン、イグザレルト、リクシアナなど
カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)
電気生理学的検査によって判明した不整脈の発生源に高周波電流を流すことで焼き、電気刺激の異常発生を抑える治療です。 電極のついた専用のカテーテルを足の付け根から挿入して心臓に到達させ、カテーテルの先を問題のある場所に密着させて問題の発生源を焼きます。
埋め込み型除細動器(ICD)
心室頻拍もしくは心室細動による突然死の予防を図るための器械です。
メイズ手術
心房の壁を切除して電気刺激をコントロールし、心房細動を治療する手術です。弁形成術や弁置換術と併せて行うこともあります。
ペースメーカ
徐脈性不整脈に対応するための人工的な興奮刺激で心臓の拍動を補う機械です。