がん性疼痛
がん性疼痛とは
がん患者が感じるさまざまな痛みをがん性疼痛といいます。
がん性疼痛は
1.がん自体が直接の原因となる痛み(腫瘍の浸潤や増大、転移など)
2.がん治療に伴って生じる痛み(術後痛や化学療法による神経障害に伴う痛みなど)
3.がんに関連した痛み(長期臥床に伴う腰痛、リンパ浮腫、褥瘡(じょくそう)など)
4.がん患者に併発したがんに関連しない疾患による痛み(変形性脊椎症、片頭痛など)
の4つに分類されます。
がん性疼痛は、がん患者が体験する痛みとされるため、がんの早期から終末期に至るまでの患者の痛み全てが対象になります。
がん性疼痛の症状
主な症状は「痛み」です。
痛みは大きく分類すると、侵害受容痛、神経障害痛、心因痛に分類でき、がん性痛にはこれらの痛みが複合して起こります。
侵害受容痛
内臓痛と体性痛に分けられます。
- 内臓痛:がんが内臓器に侵害刺激を与えて生じるもので伝達速度は遅く局在不明瞭な鈍い痛み
- 体性痛:がんが骨・筋・皮膚などに転移・浸潤して侵害刺激を与えて生じるもので、伝達速度は速く局在明瞭な痛み
神経障害痛
灼熱感、しびれ感、電撃痛、発作痛、アロディニア(触刺激に伴う痛み)などがみられます。
心因痛
精神心理的要素が関与する痛みが症状としてみられます。
痛みのほかには、息苦しさ、咳、不眠、吐き気、嘔吐、食欲不振、便秘、下痢などの苦しい症状がみられます。
がん性疼痛の原因
がん自体が直接の原因となる痛み
がん細胞が周囲の正常な組織や臓器に広がる浸潤、別の臓器や器官への転移などが原因となって引き起こされます。
がん治療に伴って生じる痛み
手術や薬物療法、放射線治療など、がん治療によって生じます。
がんに関連した痛み
長く寝たきりの状態が続き、体を動かさないため血流の低下から腰痛などを引き起こします。また、褥瘡やむくみも原因となります。
がん患者に併発したがんに関連しない疾患による痛み
変形性脊椎症、関節炎、胆石症、単純な頭痛、歯痛、生理痛などです。
がん性疼痛の診断基準
診断方法としては視診、問診、触診です。
どの部位か、どのような種類の痛みかなどの問診が主で痛みの部位に触れて圧痛がないか、感覚の検査なども行うことがあります。痛みは本人の主観であり、客観的な評価が難しくとらえにくい特徴があるため、痛みの強さの評価としては、VASやNRSなどが用いられています。
がん性疼痛の治療法
がん性疼痛の治療には薬物治療、放射線治療、神経ブロックがあります。
薬物療法
一般的に使用される通常の鎮痛薬やがんなどの激しい痛みに使用される医療用麻薬、そのほかの特殊な鎮痛薬があります。これらの薬を痛みの強さに合わせて、適切に組み合わせ使用していきます。
放射線治療
骨転移による骨の痛みやがんが神経を圧迫したり傷害することで発生する神経の痛みの治療に使用されます。
神経ブロック療法
痛みがある場所が一部分の場合に用いられます。また、副作用により十分な量の薬が内服できない患者さんに有用な選択肢です。
これらの方法以外にも心理社会的ケアがあり、不安や恐怖などからくる精神的苦痛は身体的にも影響を与えるため心のケアも重要です。